企業が新卒採用にこだわるのは若手社員が便利だから

数年は戦力にならない新卒になぜ企業はこだわるのか解説していこうと思う。

派遣社員に任せられない社内調整業務が多い
そしてそういった仕事ほど中途を雇う必然性もない

あなたはとある企業の生産技術部で働いています。あなたの会社の製品にIKO向けとNSK向けの製品があり、来月からTHK向けが加わるとする。生産ラインにTHK向けを加えるにあたって、実際に行うことは以下の15点です。

  1. 製造・品証・生産管理を巻き込んだ打ち合わせを行い、スケジュールの調整を行う
  2. 組立指示書や工作図を入手して、ラインの改造が必要か調査する
  3. QC工程表を作成し品証と製造から了解をもらう
  4. リスクアセスメントを作成して安全衛生部より了解をもらう
  5. 生産ライン改造仕様の書類作成を行う
  6. 生産ラインの改造を行うために町の設備屋と打ち合わせをし、発注する
  7. 工事に関して製造と打ち合わせして土日工事のスケジュールや改造後の確認事項をつめる
  8. 工事届を作成して部署回覧する
  9. 土日工事で必要なワークをかき集める
  10. 製品コードをひたすらに設備に入力する。
  11. 工事当日は設備屋と協力して進める。終わったら製品を流して品質確認を行う。
  12. サンプル生産の前に生産ライン先頭から2台ほどながし、チェックを行う。
  13. 生産管理と製造とサンプル生産20台について打ち合わせを行う。
  14. サンプル生産を行う。生産したワークは全て廃棄
  15. 後日の本生産では立ち合いを行う

とてもやりがいのある仕事に見えるが、内容の9割は雑務でしかない。そして、地味にワークや部品の手配業務、自分でワークを運ぶ業務が多すぎる。この仕事、1回や2回ならよいが、生産技術部に配属されたら延々とこのサイクルを繰り返すのである。やりがいは徐々に薄れていく。機種取り込みやマイナーチェンジの度に駆り出される立場はたまったものではない。しかし品質や安全にかかわる仕事を外注や派遣に丸投げすることはできない。設備の検査設定をポチポチするだけの単純な作業もミスしたらリコールになるかもしれないからである。しかも、必要なのは社内調整力のみでスキルがいらないため、中途を雇う理由もないし高い給料を出す内容でもない。新卒なら給料も安くていいし他の会社を知らないから「会社員ってこんなもんなのか」と勝手に納得してくれる。上司に従順で、疑問ももたず命令もよく聞く。要するに便利なのである。

社内調整業務に特化した人の末路

この仕事で得られるものは以下の通りである。

  1. 社内調整業務
  2. 自分が働いている工場の生産ライン(のみ)に関する知識、ノウハウ
  3. 工場内の人脈

4年くらいは成長を感じられるかもしれないがそれ以上は惰性になってしまう。つまり、30歳と40歳の価値に差がないということである。政府が70歳定年を進めようとしている中でこれでいいのだろうか。技術が自社工場に縛り付けられているからリストラされた後の再就職先も険しいだろう。なによりこういったルーチーンの仕事はとにかくスピード感をもとめられる。やりがいのない仕事なのに忙しすぎて工事内容もメーカー任せになってしまう。自分の付加価値を上げられない。転職に有利な技術力が身につかないため会社にしがみつくしかない。その人生が幸せなのだろうか?私は違うと思う。